【ケーススタディ】狭小地×街中土地に対するプランニングメソッド

私が普段仕事してる広島県は、平地が少なく、人口に対して環境が整った土地が少ない…ということで、街中の土地価格がとても高いです。

土地を探されている方必見?|坪単価マップを利用するとイメージしやすい。

そういった背景もあり、結構な頻度で「狭小住宅」のプランニングのご依頼を頂きます。

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当ブログでも、「結果」としての狭小住宅の「建築実例」をプロセスと共にいくつかご紹介していますが、間取りを載せることができなかったり、色々と制約がある中ご紹介しており中々伝わりにくい部分もありますので、今回は「ボツになったプラン」をもとに、狭小住宅に対する私なりなアプローチの仕方・考え方についてまとめてみようと思います。

 

概要のご説明

ボツになったとは言え、お客さまからは「予想以上」との評価を頂いたご提案です。ご計画中に、何と「準防火地域」から「防火地域」に編入されることが決まる…という中々にレアなケースにハマってしまい、建築コストが跳ね上がることとなったため計画地を変更されたことが原因で、ボツになったケースです。

お客さまはお子さん3人の5人家族。「それぞれしっかりと個室を与えてあげたい」と言う考え方の方で、「車はコンパクトカー1台のみの想定で良い」との事でした。確かに、土地がとても高い代わりに、利便施設は何でも徒歩か自転車で揃ってしまう便利な立地。車は1台で良いですし、足りなければカーシェアリングか、近隣の駐車場を借りた方がライフコストは安く収まりそうです。

 

敷地の状況

敷地の状況がかなり厄介です。 北側道路・30坪・南東隣地には9階建てのマンション(非常階段隣接!)・南西隣地は4階建て(こう見えて1m~2m程度境界から離れています)・隣接していないものの南西側2軒目の建物は3階建て(なぜか北側にバルコニーがある建物です)・西側隣地は駐車場で人の出入りが激しめ。更にその先には背の高い建物があり、見下ろされる関係。

東側隣地は2階建てですが、結構ビッチリ建っています。 …しいて言えば、南側にあるオープンバルコニーのある約2mくらいの「抜け感」を取り込めるか? (…かなりトリッキー)

敷地図に起こすとこんな感じです。

…かなり痺れるロケーションです。

敷地の幅は約7mと、間取り的には3間(5,460mm)が精いっぱいで3間半は完全に無理。南側にどれだけスペースを開けても日当たりは望めず、そもそも敷地面積がギリギリなので南側に隣棟間隔を取る余裕もないので、普通に間取りを作っても建築基準法上の採光も全く取れそうにありません。

お施主さまの絶対条件

お施主さまから頂いたプランニングに当たっての絶対条件は以下の通りです。

・ 子ども部屋3室
・ リビングと水回りは1階
・ 車はコンパクトカー1台想定でOK
・ 2階建て
・ 子ども部屋は3部屋

……無理ゲー……と諦めてはいけません。いや、諦めたくなる条件ですが(広さだけを考え、日当たりも何も考えずにプランニングするなら何の問題もない条件です)、諦めずに考えてみましょう。

 

プラン前に…ボリュームチェック

間取りを考える前に、「その土地にどのくらいの部屋が入るか?」を簡単に検証する方法があります。

それは、「全ての広さを畳数に直してみる」という方法です。

具体的に進めてみます。

建築可能な畳数を計算してみる

土地の広さは「30坪➡×2➡60帖」です。近隣商業地域で建蔽率が80%なので、60×0.8=48帖。 これが「法律上の上限値」です。ただし、2019年に建築基準法が一部改正され、準防火地域であっても「耐火建築物・準耐火建物およびこれらと同等以上の延焼防止性能を有する建築物」は建蔽率10%緩和されることとなりましたので、建物の仕様によっては建蔽率90%で60×0.9=54帖まではいけそうです。

別の側面からも計算します。 民法で「建物は隣地境界線から50cm以上開ける」ことを原則として考えます。ですので、間口7m×14mの敷地である今回の計画地では、0.6(50cm+壁の厚み10cm=60cm➡0.6m)×14×2(東面・西面)+0.6×(7-0.6×2)=22.6㎡➡×0.3025➡6.83帖は最低でも隣地と建物を離すために建築できないスペースとなります。

更に、駐車スペース。 コンパクトカー1台として、幅2.5m(車+乗り降りするスペース)×奥行き4.0m=10㎡➡×0.3025➡3.02帖は最低ても建築できないこととなります。

つまり…、 60 – 6.83 – 3.02 =50.15帖>48帖 ➡ 48帖

これが、1階部分に建築できる最大スペース…と考えることができます(ホントにギリギリ建てることができた場合…です)

部屋を畳数に変換してみる

お施主さまのご要望される1階に必要な部屋の広さを畳数に変換してみましょう。

玄関スペース(3帖)+トイレ(1帖)+洗面室・お風呂(4帖)+LDK(18帖)+階段スペース(1.5帖)+ポーチ(1.5帖)=29帖

48帖 > 29帖 で、全然敷地にご要望の部屋は入ります。  …物理的には…ですけどね(笑)

 

プランニングの第一段階…ゾーニング&アイデア出し

もっとシビアな土地面積や建物への希望面積の場合、ボリュームチェックは欠かせませんが、30坪で1階に和室などが必要なく、車1台のみのご要望の場合、物理的に余裕があるのは簡単に想像がつきます。 ただ、「この土地の場合は残り19帖の余裕をどう配分するか?」で住みやすさが大きく変わってくる土地であることがポイントになります。

どういう事かと言うと、この土地の抱える最大の問題は「採光」と「抜け感」です。例えば、19㎡の余裕を南側に全振りして、19㎡÷7m(間口)=2.7m程開けてお庭を作ったとして、日当たり問題を解決できるでしょうか……無理です。全く意味を成しません。

南側には9階建てと4階建ての建物があります。 しかも、非常階段やバルコニーがあり、プライバシーが全く守られない状態です。そこにお庭を設けたところで、何をすることもないのではないでしょうか?

アイデア出し

そこで、視点を変えた「この土地で採用を検討すべきアイデア」をどんどんキーワードとして抽出していきます。

・ 外に閉じて中に開く
・ オープンスタイルな間取り
・ 中庭
・ 壁面収納
・ ハイサイドライト
・ 目隠しフェンス
・ 吹抜け
・ さらし階段(ストリップ階段)
・ 南側には窓無し(捨てる勇気)

こんな感じです。

考えがちなのは、通常と南北逆転プラン。 水回りを南側に設けて、LDKを北側に持ってきて北側の「間接光」で採光するパターンの家です。これだと、建築基準法の採光問題もクリアでき、「そこそこ明るい?」リビングも実現します。

が、ここは街中、道路の交通量も多く、北側道路に面するところに大きな窓を設けても、カーテンは閉めっぱなし…結局暗いリビングになってしまいます。

そこで、アイデア出しのキーワードをどんどん間取りに取り込んでいきます。

・ 外に閉じて中に開く/中庭/南側には窓無し ➡ 大きな窓を中庭面に取り、外側…こと南側隣地に対して窓は設けない
・ オープンスタイルな間取り ➡ 実際の広さ以上の広さを感じるように…中庭からの採光を最大限…家全体に取り込めるように
・ 壁面収納 ➡ 1階の東側や南側に窓は極力設けないことで綺麗な壁ができるので採用可能
・ ハイサイドライト ➡ とはいえ、東側隣地は2階建て…視線をかわしつつ高い位置からなら朝日を採光できるかも
・ 目隠しフェンス ➡ 中庭を設けても視線が気になるところ。これは必須
・ 吹抜け ➡ 4階建て・3階建てが並ぶ南西側からは「補助光」を取り込めるかも?
・ さらし階段(ストリップ階段)➡ オープンスタイルな間取りの延長線

こういった感じで採用方法を検討し、敷地図に落とし込んでいきます。

この段階で、僕の頭の中ではこんな感じのイメージが…。吹抜け・中庭・さらし階段を使って…ゴニョゴニョ…。

 

間取り公開

正直、ここに辿りつくまで3回くらい間取りをグチャっとしました。 私が考えた間取りはこんな感じ。

ポーチと書いていますが、4.5帖の正方形は中庭です。中庭を起点として、小さな吹抜けと東側の壁面収納が印象的な4LDKの間取りです。ご家族が多いこと、屋外に物置を置くスペースがないことから、玄関エリアは広めです。洗面室から中庭に出れるのは、通風目的もありますが、好みで屋外干しもできるようにです。

バルコニーは、東側半分を「グレーチングバルコニー」として採光を確保しつつ、西日を必要以上に取り込むのをおさえる目的で、更にリビング北側の大きな窓で建基準法の採光計算をクリアする算段です。

難点は、「洗濯動線が長いこと」で、これをどう考えるか?で方向性が多少変わるかな?と思いつつ…のプランニングでした。

パースに起こすと、こんな感じです。

こんにちは玄関にならないように配慮した玄関エリア。(格子が変なコトになっていますが、それは愛嬌…)。

玄関入った瞬間、土地の広さを忘れるような奥行き感のある玄関エリア。

リビングに入ると、さらし階段と中庭がお出迎え。主人の書斎スペースと壁面収納が東側(左側)に並び、壁面収納の上部から朝日が落ちる計画。

キッチンから見るとこんな感じ。陽だまりになる中庭から柔らかい光をリビングに落として、南西側に設けた小さな吹抜けから補助光を取り込む計画。当然、テレビの横の窓は型ガラスにしてプライバシー性は確保。

オープンスタイルな間取りでワンフロア感覚で解放感ばつぐん!

周辺環境もトレースしつつシミュレーションを重ねます。

 

まとめ

間取りプランを考えるには、事前の準備が大事なことが多少でも伝わりましたでしょうか? 更に、設計者の中でも周辺環境を「見る」だけで間取りの妥当性を検証できる人はごく僅か。シミュレーションを3Dで検証しつつ、細かいアジャストを加えて間取りを完成させるべきだと私は思います。 更に言えば、敷地の状況とお施主さまのご要望から「どれだけのアイデアが出てくるか?」が設計者(プランナー)の能力に左右される部分。逆に、この部分がしっかりできていれば、可能性はグッと広がるので、設計者と一緒に力を入れて検討してみては如何でしょうか?

 

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    Takashi Nakata

    Takashi Nakata

    住宅の基本設計と営業をする人|失敗しない家づくりのコツを発信|たまに写真や日常について|職歴:地場HM(大手HM・設計事務所勤務経験有)|実績:建築150棟・内基本設計100棟|1棟1棟丁寧に家づくりをさせて頂いております|間取り相談や家づくり・住まいについてのご相談は気兼ねなくご連絡下さい。

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