

広島市安佐南区|O様邸
敷地面積 | 214.40㎡(64.85坪)
延床面積 | 102.31㎡(30.94坪)
完成年月 | 2025年4月
数年前に購入した建売住宅からの住み替えのご計画
Oさんの家づくりの相談は「建売住宅からのお住み替え」。当時と家族形態が変わり手狭になってきたこともあり、もともとのお住まいから近くで土地を探して注文住宅を建築したいとのご希望でした。初回の面談により、ある程度私との家づくりのイメージをお持ちいただけたこともあり、土地探しに注力することに。そこで、幾つか候補地をご紹介する中で、Oさんが興味を持たれた土地はこちら。

古家付きの土地です。駐車スペースは縦列…しかも結構な勾配が付いているので、シャコタンの車だとお腹を擦ってしまいそうです。
古い団地の場合、空き地があることは稀で、大概が古家が付いた状態で販売されています。ですので、私が土地探しをご依頼された場合、土地だけでなく中古住宅の情報も網羅するように気を付けています。
さておき…こちらの土地、道路が北側の敷地です。加えて、後ろに見える建物が上の方に見えると思います。つまるところ、南側隣地が3m程度段上がりで、日当たり的に不利な土地です。
しかしならが、Oさんがこの土地を気に入られた理由。 それはこちら!

北側の道路の先の眺望が抜群で、抜け感タップリです!
私がこういった土地でまず考えるのが「この眺望を新居での“日常”生活にどう取り込むか?」です。
せっかくの眺望を活かさないのはもったいないですが、だからと言って
「無理に…」とか「わざわざ…」景色を見に「○○」に行く間取り
はNGです。
最初は良いですが…1カ月もしたら景色を見よう…とはならなくなって来ますし、何より家の外に出れば景色が見えるので、家の中に「わざわざ景色を楽しむ空間を作る」のはコスパ的にも悪いと思います。
大事なのは
眺望は“日常”生活に取り込む
ことです。
北側に開くプラン|日当たりをどう取るか?

古家が解体されてくるとよりはっきりと見えてきますが…南側隣地が高いので、日当たり面が心配…ですよね。土地を見ても撮影したのが10月ですが、敷地の南側半分くらいが日影になっています。 よって、南側を2~3m離して家を配置したところで、南側からの光は夏場以外は期待できそうにありません。
南側段上がりの敷地への答えは“スキップフロア”
北側の眺望を取り込むために北側リビング+吹抜けはOさんと私の中での既定路線。加えて、南側の光を取ろうと思うと…。
南側隣地との距離を取り、南側にも吹抜けや階段を設けて上部からの日当たりを確保することは可能ですが、吹抜けを取ると大きな吹抜けが2つできることになり、デメリットが大きくなる。階段を設けるだけだと北側深くまで日差しを取り込むことが難しい。

以前も同じようなロケーションでプランニングさせて頂いたお宅は、南側に大きな吹抜けを設けて北側に階段を設ける「逆パターン」でしたが、Oさんは「リビングと中庭の間に階段を入れたくない」というご希望があり、これと同じ手法は使えず…。
そこで、この土地へのアプローチとして私が選択したのは“スキップフロア”でした。

左側が南側の中2階、右側が北側の吹抜けです。曇りの日に撮影したので分かりにくいですが、北側からの柔らかい光と南側の直射が室内に降り注ぎます。

中2階のスキップフロアを介してリビングに直射が降ります。

外観デザイン

私の中では鉄板?のスタイルの外観デザインです。黒と木目とタイルとコンクリートが調和します。

古家の写真を思い出して頂きたいのですが、元々の敷地は段上がり。つまり、道路との高低差があるので、中庭の様子は道路の通行人からは見えない安心空間に。
INTERIOR|インテリア

30坪と比較的コンパクトな家で最大限の広さを感じるように玄関は通り土間スタイル。帰宅後すぐに手を洗えるように洗面台は玄関エリアに配置。


玄関とリビングが同一空間であるものの、プライバシーはキチンと守られた空間に。左側に見える掃き出し窓がある部屋は、旦那さんの仕事部屋。

開放的なリビングとは対照的に、落ち着いた雰囲気のダイニングキッチン
土地の特徴を活かしたプランニング。デメリットをメリットに変える発想力
眺望が良い土地である場合、北側道路の敷地であってもその特徴である北側に大きな窓を設けたリビングを配置するところから間取りを考えると良いと思います。その上で、直射をどれだけ取り込むかを住まい手と作り手で話し合って緻密な計算のもとにプランニングすると、家づくりが成功に近づきます。
「眺望が良い土地」であることで、土地価格も幾らか上乗せされていることも多々あります。

分譲地の最前列の眺望の良い土地に建築いただいたこの方の土地も、2列目の土地と比べて200万円程度高かったので「眺望に200万円払っている」ということになりますので、これを活かさないと「勿体ない」ということになります。
これは、角地にも通ずる話で、せっかくの東南角地の土地を購入されても、道路からの視線を嫌ってか東にも南にも窓が殆どない家をたまに見かけます。これだと、角地でなくて中地で良かった?という話になります。土地を活かしたプランニングを意識することで、土地の探し方も変わってくるのでは?と思います。
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