こんにちは! T.Nakataです!
設計者の能力は窓計画を見れば一目瞭然!と言うほど、窓計画は大事です。窓計画が上手・下手を判断するのは難しいかもしれませんが、少なくとも「窓計画を意識して間取りを作っているか?(プランニングしているか?)」は、その家を外から眺めるだけで分かります。
間取りの提案や立体パースを見せてもらっても、何かピンと来ない
という方は、もしかしたら窓計画をキチンと為されていないご提案を受けているのかもしれません。
また、よくあるケースとしては、
ここに勝手口があると良いな!
折角だからここにも窓を取っておこう!
承知致しました!
このように、お施主様(素人)の従来の一般的な感覚に引っ張られて、全体のバランスが崩れてしまったプラン(お客様プラン)になってしまっているケース。
こういった失敗パターンは、お施主様自身が窓についての理解を深めることで、「設計者が窓計画を意識して間取りを作っているか?」が分かり、「ご自身の担当の設計者の力量」もある程度はかることができ、ある程度回避することができます。
この記事をご覧頂くことで、ご自身でもある程度窓計画ができるようになる…少なくとも意識して頂けるようになると思います。
この記事は以下のような方におススメです!
- 担当の設計者・営業の力量を図りたい方
- 注文住宅の間取り作りで失敗したくない方
- 窓について理解を深めたい方
それでは、始めます!
窓の役割を再確認する
窓のない部屋を想像してみてください。真っ暗で、閉塞感を感じる空間になりますよね。「窓」には、心地よい空間づくりに必要な大切な機能があります。それは、
- 採光
- 通風
- 眺望
この3つです。 他にもありますが、気にすべきはこの3つです。
勿論、窓を取ることによるデメリットもあります。それは、
- 断熱性能
- 防犯
- 防災
- 防音
- コスト
この5つです。特に、最近は窓の高性能化に伴ってコストもグッと上がっているので、コスト的なデメリットは大きいです。
このように、メリットにもデメリットにもなる「窓」。「採光・通風・眺望のどの機能も持たない窓は思い切って削減してしまう」くらいの感覚を持っても良いと思います。
窓の種類を知る
昔は「窓と言えば引き違い窓」。ただ、最近では「意匠(デザイン)」と「デザイン」の2つの理由から引き違い窓の採用率は下がってきています。
LIXIL さんや YKKap さんのホームページの窓サッシのページをご覧頂くとお分かり頂けると思いますが、窓の断熱性能を示す熱還流率(壁の両側の温度差を1℃とした場合に1時間あたりに1㎡を通過する熱量)の数値を示す時は、必ずと言って良いほど小さな注釈がついて「たてすべり出し窓」という表記があります。
「すべり出し窓」には「縦辷り」「横辷り」の2種類があって、写真のような「窓の下側を外に押し出す窓は横辷り窓」と言います。
FIX窓やすべり出し窓は引き違い窓に比べて構造がシンプルなので、断熱性能が高いです。
逆に、引き違い窓はすべり出し窓に比べて、熱還流率で約0.3W/(㎡・K)程度数値が悪化する傾向にあります(ここら辺は覚えなくても大丈夫です。引き違い窓は他に比べて断熱性能が低くなってしまうんだなぁ…くらいに覚えて頂けたらOK)。
意匠(デザイン)面では、引き違い窓を使うと、どちらかと言うと和風に寄るので注意が必要です。
和風に寄る、という事は…和モダンをイメージした空間にはマッチするので、引き違い窓が悪いというわけではありません。
樹脂窓か?樹脂複合サッシか?
最初に断っておきますが、私は性能に寄った専門家ではありません。ある程度平衡感覚を持っていると自負している普通の住宅営業&基本設計マンです。
2022年11月現在の感覚では、これはもう、樹脂窓一択です。樹脂窓のデメリットだった「高額」というコスト面の問題が最近クリアされてきており、1軒まるまる樹脂複合サッシから樹脂窓に変えても20~30万円くらいで済みます(20~30万円も高額ではありますが、それ以上の効果はあります)。
ただし、樹脂窓(屋内側・屋外側ともに樹脂)が樹脂複合サッシ(屋内側が樹脂・屋外側がアルミ)よりも劣る点が4つあります。それは、
- 樹脂複合サッシに比べて樹脂窓はコストが高い
- 樹脂複合サッシに比べて樹脂窓は枠が太くなってしまう
- 樹脂複合サッシに比べて紫外線に弱く、日光が強い場所には不向き
- 樹脂複合サッシに比べて窓の種類がまだまだ少ない。ガラス面の大きさに制約がある。
です。わざわざ4つともに「比べて」という表記を入れさせて頂いたのには理由があり、先述の通りコスト差が縮まってきていますし、樹脂窓の耐用年数は30~50年と十分長いです。
窓の種類が少なかったり、ガラス面の大きさに制約があったり、枠が太くなったりと、意匠(デザイン)面で不利であることには違いありませんが、そこは設計者が工夫してクリアすれば良いと思います。
ただし、「引き戸の勝手口」をはじめとする、「あって欲しいけどラインナップにない」種類の窓(屋外扉)もあるので(2022年11月現在)、この場合は部分的に樹脂複合サッシを組み合わせるか、他の選択肢を探るか?などが必要となります。
窓計画のポイント
ここからが本題です。窓の機能を再確認し、色々な窓の種類があることを理解頂いたら、いよいよ窓計画です。ご自身の間取りを見ながらチェックしてみてください。
外観デザイン
外観デザインにおいて「窓」の役割はとても多いです。窓が多い家は、外観デザインをまとめるのが本当に難しいです。
上の写真は、「南側道路」で掃出し窓が4つもあるので(2階の居室は全室南側で全ての部屋からバルコニーに出たい、というご希望からこうなりました)、一歩間違えるとガチャガチャした外観デザインになりがち。
そこで、
- 窓の高さを揃える
- 窓の取付位置(横方向・縦方向・間隔とも)を揃える
- 水平方向を強調して建物全体のシルエットに安定感を持たせる
という3つを意識して纏めました。
その点、下の写真のように窓面積が小さい外観デザインはまとめやすく、
- 窓の種類を合わせる
- 窓の幅・横方向の取付位置を揃える
ことで、まとまり感を出しました。
たったこれだけを意識することで外観デザインにまとまりが出ますので、皆さん自身でも気を付けて見てみて下さい。
例外が幾つかあります。いい例として、無印良品の家の「窓の家」があります。計算されたランダムな窓計画?の家で、かなりのセンスを必要とします(そういう意味では、ファッションと同じで「着崩す」のはとても難しいです)。
眺望を取り込む
窓の大きな機能の1つである「眺望」は窓計画の大事なポイントの1つ。
基本として「視線が抜ける方向に窓を取る」ようにしましょう。南側に建つ隣家の方向に窓を取ることをやめて、視線の抜けがある北側に窓を取った方が、よっぽど気持ちが良いですし、採光量も多いこともあります。
プライバシーを確保してカーテンレス生活
いくら抜けがあるからと言って、逆に外から見られ放題のプライバシーの確保されていない窓だとカーテン閉めっぱなしで眺望を望めません。そこで、「外からどのように見られるか?」をしっかりと検討してプライバシーを確保して、カーテンレス生活を送ることができるように考えましょう。
窓の取付高にこだわる
先ほどの「プライバシーを確保する」ことに関わりますが、「窓の取付高」にこだわりましょう。
道路と敷地の高低差が無い家の1階であれば、道路より床の高さは60cmくらい高くなります。つまり、窓の下端を90cm以上の高さに取り付ければ道路から1.5mの高さとなり、「室内の床に置いてあるモノは見えなく」なります。お施主さまの身長にもよりますが、窓の下端を約150㎝以上の高さにすれば、屋内外の人の視線がかち合う事は無くなります。
このように、窓の取付高さにこだわれば、目隠しフェンスなど外構に費用を掛けなくとも、視線が抜けるプライバシーを確保された窓を取ることができます。
無駄な窓は無くす
窓は地味?にインパクトがあります。エコカラットなどしっかりお金をかけて壁面にアクセントを入れても、何気ない窓が1つあるだけで窓が悪目立ちしてしまいます。
また、壁面は「モノを置く」ためにはとても重要です。「暗いかもしれないから」と壁があるとついつい窓を取ってしまいがちですが、壁面を綺麗に残すことで、家具やグリーン、インテリアを施すことができます。
内外の繋がりを意識する
当たり前ですが、窓は屋内と屋外の真ん中にあります。真ん中にあるので、屋内外をつなげるか?分断するか?によって空間の感じ方が全然変わってきます。
- 床や天井の高さを揃える(連続性を持たせる)
- 床や天井の素材を揃える(連続性を持たせる)
- 開口面積を大きく取る
など意識すると良いと思います。
窓もインテリアの一部
窓もインテリアの一部。上の写真は準防火地域での家づくりで連窓が不可能な場所でしたが、連続しているように見えるように不燃材を下地にダイノックシートを巻いて窓と窓の間の壁を黒く装飾しましたが、このように「窓をどのように見せるか?」を意識して計画しましょう。
窓は無理に全部開く必要はありません。眺望をしっかりと取り込みたい場合はFIX窓にして無駄に枠が出て来ないようにするのも手です。
FIX窓は、開けることができる窓よりも枠が薄いため、眺望を取り込みたい方向に設けるにおススメです。
まとめ
窓計画は、何度も取り上げさせて頂いている程、家づくりにおいてとても重要なポイントです。
「窓計画の上手さ=設計の上手さ」と言っても良いので、しっかりと窓についてはこだわりぬいて頂けたら、と思います!
窓計画を殆ど考えられていない家が量産されているのが、今日現在の家づくり現場の現実なので、負けずに家づくりに成功して頂けたらと切に願います!
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